ソシャゲーのテスターをやって仕事中に叫びだしそうになった話
私はある時期、とあるソーシャル系ゲームのテスターをやっていたことがあります。
テスターとは、ゲームがちゃんと仕様通りに動くのか、製品内にミスがないか(バグがないか)、などを調べる人のことを指します。
デバッガーともいいますね。
テスターとデバッガーは厳密に言うと違うものらしいのですが、私にとってはどちらも同じです。
今回は、このテスターについてちょっと語ってみようかと思います。
なお、念のためにある程度ぼかした書き方をしています。
それと例えにドラクエなどのゲーム用語を出していますが、固有名詞を出しているゲームのテスターだったわけではありません。
全てのモンスターにすべての魔法をかけて結果をチェックする
テスターの仕事について、こういった都市伝説みたいな話を聞いたことがあるかもしれませんが、私も雇われている間に似たようなことはやっていました。
その時の私が所属する会社が作っていたのはいわゆるソシャゲー系だったので、現在進行形で公開中のゲームの、次のバージョンアップ時に追加される仕様などをテストをするのが主な業務でした。
バージョンアップが終わったら、また次のバージョンがリリースされるのでそれのチェックに移行する、これの繰り返しです。
ソシャゲーの宿命か基本的にゲームが完成するということはなく、バージョンアップはしょっちゅう行われていました。
バージョンアップのたびに新しい仕様が追加されたり、新しいキャラクターが追加されたり、新しいスキルが追加されたり、新しいステージが追加されたりするわけです。
テスターはバージョンアップごとに追加される仕様をチェックし、新キャラやスキルの挙動を調べ、新ステージにおかしなところがないかを総力をあげて調べます。
しかし、やることはそれだけではありません。
バージョンがあがると大抵は何か別のところで問題が起きます。
今まで問題なかったキャラやスキルの挙動がおかしくなっていたりするのです。
それで、既存のある一つのスキルに異常が発生していたりすると、他のスキルにも異常が発生している可能性があるため、全スキルを調べる必要が出てくるのです。
ようするにスライムにメラからギガデインまで使って、与えるダメージなどにおかしいところがないかをチェックするわけです。
スキルやキャラが少ない頃はそれほどではないのですが、数が多くなってくるとチェック項目も膨大な数になります。
メラとかギガデインはまだ分かりやすいですが、ルカナンをかけて実際に守備力が下がっているかどうかは殴ってみないと分かりませんよね?
しかも、上で述べているようにそれなりの頻度でやる必要があります。
新しいキャラクターが追加されたり新しいスキルが追加されるたびに、スライムにメラやギガデインをかけて、さらにはルカナンを使って殴り倒したりするわけです。
スライムが絶滅するレベルです。
そして不幸なスライムは新スキルや新キャラとは何の関係もありません。
リアルなイベントがある時期は、大抵ゲーム内でもイベントが行われる
クリスマスとか正月とかバレンタインとかのイベントの時期になると、大抵ゲーム内でも何かイベントが行われ、それに対するチェック項目も増えることになります。
上記のバージョンアップと平行して行われるため、大抵は作業量が膨大なものになります。
もちろん、いつもより作業量が増えるからといって、テスト作業が行える日数は増えません。
バージョンアップする日はすでに決まっていますからね。
増えるのは残業をする時間と休日出勤する日数だけです。
そのため、そういうイベントの時期になると「クソが」ってなるんですよね。
それに加えてイベントが終わると、『そのイベントがちゃんとゲーム内で終わっているか』のチェックもすることになるんですよね。
さらに「クソが」って思うわけですよ。
クリスマスとか正月とかバレンタインになると「リア充○○しろ」って思う方もいるのでしょうが、私がテスターをやっていたころは「リアイベ○○しろ」って思ってました。
ゴールがない
こういうソシャゲーは、運営が上手くいっている間は基本的にゲームがエンディングを迎えることはありませんよね。
テスター視点で見ると、延々と同じゲームのテストをすることになります。
マラソンで例えると、ゴールがないのに走り続けるようなものです。
仮にこれが、一本開発が終了したら次の新しいソフトの開発に入る……みたいな、コンシューマー系のゲームのテストだったら、そこまで苦痛には感じないかもしれません。
少なくとも、スライムにメラからギガデインまで使う作業が、ひょっとするとサボテンダーにファイアからメテオまで使う作業に変化したりくらいの差はあったかもしれません。
しかし、私はずっと同じゲームをテストしていました。
ずっとスライムにメラからギガデインまでを使っていました。
そしてついに
残念ながら、私の心は耐えられませんでした。
ある日を境に、睡眠時間はちゃんと取っているのに日中も眠くなる日が続くようになりました(その時は知る由もなかったのですが、欝病などに日中ずっと眠くなるという症状があるようなので、それだったのかもしれません)。
顔を洗うと一時的にシャキっとするのですが、会社に向かう頃からもう眠くなり始め、仕事中もほとんど集中できなくなってしまいました。
それに加え、ある時からずっと、会社にいる時に突然大声で叫びたくなることがあったのです。
日に日に「今自分は叫ぶのをこらえているな」と思う時間の割合が増えていきました。
仕事をしながら手で口を押さえていたこともしばしばありました。
そうしないと実際に叫びだしそうで不安だったのです。
あと一ヶ月も我慢していたら本当に会社のオフィスで叫んでいたかもしれません。
それである時、ついに会社に辞意を伝えました。
幸い、特に大きなトラブルもなく、やがて引継ぎも終わらせて退職することが出来ました。
後先考えない行動でしたが、あの時は本当に限界だったのです。
その会社の名誉の為に一応補足しておきますが、労働環境自体は悪くありませんでした。
テスターが残業することはたまにしかありませんでしたし、基本的に土日も休むことができました。少なくともテスターにとってはブラック企業ではなかったと思います。
ただ、私がテスターという業務に耐えられなかっただけなのです。
おわりに
以上です。
テスターをやったことがあると、こういうソーシャル系のゲームで緊急メンテが発生した際にいろいろと考えるようになります。
同病相哀れむといった感情が湧いてくるのです。
開発者の方もテスターの方も大変だろうなと思いますが、頑張って欲しいものです。
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侘び石とか詫びカードパックとか期待してますよ^^